「情報喫茶」とは何か

今回の摘発でなにかのついでのように警察の立ち入りを受けた、客を斡旋し「売春を幇助した」とされる施設、情報喫茶であるが。
そうか、世間一般には馴染みがないか、知られてないか、そういうもんなのかと思うくらいには業界の人になっているのか自分。


それはさておき。
情報喫茶とは、吉原のソープランド街の中心部より路地1本2本隔てて営業している、お客をソープランドの店舗に案内する事をなりわいとする店である。
かつては「情報喫茶」という看板をどこでも出していたのだが、以前に書いた通り、平成18年の春からは「情報」の文字は店頭から消えた。
が、どの店も独特のうさんくささを発しているたたずまいだし、特に名物メニューが張り出されてる訳でもないし、どこに行っても「ワンドリンク500円」だし、一般喫茶店との違いは、見れば分かる。


そのシステムとしては。情報喫茶を訪れた、お客になるつもり満々の男性は、まず、だいたいの場合情報喫茶のマスターなり店員から予算を尋ねられる。ここでの予算とは当然、遊びの総額である。
すると、情報喫茶は予算に見あった店舗に電話をして、ほどなくして電話をかけられた店舗のボーイ氏が女子の顔見せ写真を持って自転車ですっ飛んで来る。
そこで見せられた写真の中から女の子を選べば、皆さんめでたしめでたし。
お客には風呂屋さんから迎えの車が来て、情報喫茶は風呂屋さんから紹介料をもらう。そういう施設である。


今回摘発された角海老グループの紹介所というのは、有名店舗のブランド力をいかして、それをソープランド自ら直営でやっていたものである。
随分前に聞いたところによると、角海老グループさんは情報喫茶経由でやって来たお客の場合、女子が受け取るサービス料から情報喫茶への紹介料をさっ引くらしい。通常の場合は、店が入浴料から情報喫茶への紹介料を「泣く」ものであるのだが。角海老グループはそうじゃない、と、かつて在籍していたという女子が怒っていたので、記憶に残っている。
そういうお金に敏感なグループであるなら、まぁ、自前で紹介所を設けたのも納得はできる。
タクシーの運ちゃんによれば、角海老グループの案内所にお客を連れて行くと、紹介料はもらえないが段ボール箱いっぱいの角海老宝石グッズ(ライターとかポケットティッシュとかそんなもんらしい)をもらえる、とのこと。あくまでお金は払いませんの姿勢であるな。


その他にも、吉原では特定のグループの直営であると噂されている情報喫茶があったりしたし、今でもあるのかもしれないが。今の自分の在籍店舗がそういうところを持っていないどころか、あまり情報喫茶とおつきあいをしない、角海老グループよりもさらにケチな店舗なので、最新事情はオレにもわからん。
さすがに今はもうないと思いたいが、情報喫茶やポン引き経由のお客の場合、本来のプレイ時間を10分20分それ以上短縮する、「時間ぼったくり」の店も存在していたと聞いている。紹介料払った分、きっちりサービス引くよ、ってことね。


かつて、特にバブル期そのちょっとあとくらいまでのまだまだ吉原の景気が良かった頃は、情報喫茶はまさに「情報」喫茶で、特に人気のある女子の店舗移籍情報をきっちりフォローしていたり、今日は特に遊ぶつもりはないんだけどという冷やかしのお客にも常設の女子アルバムを持っていて見せていたり、入店や移籍を考える女子に、今お客入りが良い店を紹介したりと、様々な使われ方をしていたらしい。
が、今の情報喫茶は、基本的にはひたすらただの「ソープランド案内・紹介所」である。
そういう、もはや勢いを失ったところから叩くというお上のやり方は、確かに気分のよろしいもんではない。そりゃ、さぞ目に見える効果は出やすかろうがなぁ。


ところで、話は大きく脱線するのだが。
近年吉原にいて気になる事がある。さすがに吉原のメインストリートの店が取り壊されたらコイン駐車場あるいは月極駐車場ができるのがほとんどだとしても、ごく一部の店舗が存在している千束3丁目エリアや吉原大門付近に、次々と分譲マンションが建てられているのである。オシャレ賃貸も増えてるな。
さすがに多くは1LDK2LDKどまりの、単身者あるいはDINKSカップル向け物件であるのだが。ここ10年くらいの間に建ったマンションの中には、明らかにファミリー向けの物件が幾つかある。


で、そういう、斜め向かいにソープランドが営業しているマンションの玄関前で、生協の共同購入品を幼児を遊ばせつつ仕分けする奥さん達、を見つつ通勤する自分がいるわけであるが。
…何年やっててもシュールな気分になるんだよなこれ。
さすがに、自分が幾ら家族に職業カムアウトしていても、ソープランドの看板が見えるところに住まうのはきつい。これは勤めている人間だから思う事なのかもしれないが。
しかし、ともあれファミリーの皆さんどうやら割とあっけらかんと、ソープランドがお向かいにあるマンションに暮らしていらっしゃると。


それはさておき、ソープランドが地元企業として存続させておくのにうまみがなく、それだったらマンション建てて住民税徴収を増やした方がマシだとお上が考えた場合は、さて、ここはどうなるんだろう、とか、当然考えずにはいられない。
このラインで吉原が潰されて行く可能性については、うん。つくづくとぞっとする。
が、吉原の路地裏の分譲新築一戸建てが、この不景気のせいもあろうが長らく売れ残っているのを見ると「いやいや、この世にそんなに物好きは多くない。大丈夫大丈夫」とも思う。