それでも色町は回ってる

友人が勤務している会社は、なんとこのご時世に夏だけで4ヶ月の賞与が出る、そうだが。そういう企業もある一方で、基本的には、皆様働いて働いて働いても「金一封」という感じなんでありましょうよ、今年の夏のボーナス。


それでも、年明けから2月3月の、じっと手を見るより他なかった閑散っぷりよりはいささかマシな吉原である。事件はあっても、事件と関係ない店舗は何事もなかったように営業している。あくまで表面上だけにしても。そういうもんである。
もっとも、「いささかマシ」は自分個人の稼ぎや在籍店舗の客入りから得た感触でしかなく、もしかすると平均をとればいまだかつてなく景気の悪い吉原になっているのかもしれないが。
自分が「お仕事頑張ります」やってる分には、まだなんとか食って行けて暮らしは立てられる。


角海老グループ摘発事件のあと、自分の通勤ルートではないので角海老・三浦屋さん両店舗が営業しているかどうかはいまだ確かめていない。
営業停止されるにしても、その処分が正式に言い渡されて営停期間が定められるまでは、基本的には営業は続けていていいもんらしい。
以前千束3丁目エリアの某店が営業停止された折りには(やはり早番女子の店泊が摘発理由であったと聞いている)、摘発から処分決定までの間もひたすら店を閉じていた。営業停止は避けられないとなった場合、そのように営業を自粛して強い反省の態度を見せる店舗もあるのだが、効果のほどは、どんなもんだか。
その某店の場合、3ヶ月くらい経った頃だったか、ひたすら閉ざされ続けているシャッターの上にようやく、四角の中にバツマークの「営停ステッカー」が出現した。
「うひょー、営業停止さらに8ヶ月かい」と、それを見て呟いたものである。
実質の営業停止はほぼ1年っておい!


通勤ルートにある数件の情報喫茶は、ガサのあと一瞬閉じたもののすぐに営業再開したところもあるし、直後には営業していたのに今は店を開けていないところもある。
各店のご店主達、判断に迷っているところなんであろう。
情報喫茶がどういうものかについては、また後述。


つらつら考えるに。吉原の地、赤線が潰されたのちにトルコ風呂が立ち上がり、今のソープランド街に至っている。なんせ、世界最古の職業の1つだそうだし、しぶといにはしぶといであろう。
歴史を顧みれば、公娼街への締め付けを厳しくすれば私娼街が手の付けられない事になり、結局公娼街への締め付け解除しましたなんつう事の繰り返しだし。
まぁ、ソープランドにいるのは公娼ではないが、保健所に警察に消防署、あらゆるお役所からの規制と認可を受けた上で営業している、そこに行けばどういうサービスが受けられるのか皆さんよくご存知の上でいらっしゃる、まこと摩訶不思議な店舗である。


こういう色街がお上から一番強く求められるのは、金の流れ云々じゃなく、お上の面子を潰さない程度に世の中から隔絶されてひっそりとやっていること、なのだから(なんて素敵な男社会ルール)、基本的には各店舗のオーナー達、うまくやるだろうとも思う。
なんせ、もうソープランドを経営するうまみなんてのはほとんどの店にはないはずで、今この街にある店、そしてこの街にいる女子は、自分も含めて「ここから引くに引けない」者達ばっかりなのだ。だから赤線解体したって吉原は吉原のまんまであった。そこいらへん、お上も理解してないわきゃなかろう。
…いや、ことここに至って「理解してないかもなぁ。どうも理解してないような気もするんだよなぁ」と感じるあたりが、不安なんだけどね。