神がギフトをもたらし続けてくれなくなった時に

天才はどうなってしまうのだろうか、とか、天才ではない自分にはまったくわかりようがない事をたまにつらつら考えているのだが。


「こうなってしまいます」というのを、見たい訳じゃなかったんだよマイコー

History

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ネバーランドを建設できるほど成功してしまった事は、彼にとって本当に良かったんだろうかと、彼の生前から考えていた。
さほどのファンでもなかったが、自分はどうも彼に同情的で、「少年に対する性的虐待ってなぁ…。いまだ大人になった自覚がない年齢だけは立派な中年が、かつての自分が『おともだち』とできなかったことをやったら、そりゃー子供の側は彼が大人じゃないのを見て取るからあやしくもなかろうが。世間にとっては奇矯な行動でしかないわなぁ。でも、彼にはそれは分からないだろうな」とか思いつつ、彼の裁判の報道を見ていた。


さっさと孤独に死ぬのは、世間からライバル扱いされていたプリンスの方だと思っていた。特に90年代前半までは。
ところが、殿下は相変わらず行き過ぎたコントロールフリークぶりは発揮し続けているものの、すっかりいい感じに大人になってしまい、スーパーボウルでハーフタイムショーをやるような立派なアメリカの国家的スターになった。その間、マイコーはひたすらスキャンダルと借金だけが身辺を騒がせていた。


どうやっても、彼はまともに大人になる事はできなかったのだろうか。
神様は結構残酷で、いつまででも供給し続けてくれるように見えたギフトを、ある日いきなり停止する。多分、その時が大人になる試練なのであろうが、マイコーにはもうその時、立て篭れるネバーランドがあった。あれは、作らなかった方が良かったんじゃなかろうか。この先、一番の収益性を考えると、あの地は「マイケル・ジャクソン記念テーマパーク」になってしまう公算大だが。


マイコーがもう再度彼自身のパワーで彼の時代を取り戻す事はなかったであろう事を考えると、スターとしての彼はここで消える事ができてよかった、のかも知れない。
しかし、彼が彼の人生を我がものとするというところはまだまだ遠い道のりであっただろうし、それがかなわないまま、このような終わり方をしてしまったというのは、たいへんに悲しい。


追記・うちにはマイコーのCD2枚組ベスト(上のアマゾンへのリンクのやつ)と、やはり「ヒストリー」に「ナンバーワンズ」2枚のDVDがあり、いずれも所有権は息子のものである。息子が10才そこそこの頃に「欲しい」と言ったのがマイコーのベストだったんだよな。それで、誕生日プレゼントとして買ってやりながら、彼の子供心への訴えかけぶりの凄さを再認識したり。


しかし、「ナンバーワンズ」の最後3曲は、彼がある程度好きだった人間ならば、今や本当につらい思いして見る事になるだろう。
「アース・ソング」にはまだ幾らかパワーがあるけど、「ブラッド・オン・ザ・ダンスフロア」「ユー・ロック・マイ・ワールド」の2曲のプロモでの衰えぶりは、リアルタイムで観ていてもなんともいえないものがあった。
そして、「アース・ソング」で示されるあまりにプリミティブかつナイーヴな世界観に困惑するほどには、自分はまともに年を取ってしまったのだとも。