リスキーなのは事実

時折スキン接客希望のお客に言われるのが、ノースキン接客可能な女子にコンドームを使ってくれというと、機嫌を悪くされた、怒られた、ということ。
…あー、まぁ、あるでしょうねえ。もしかするとその時コンドーム在庫がなくて誤魔化したのかも、なんて冗談にまぎれさせてはおくものの、考えてしまう話ではある。


恋愛の場面でも、いやそういう場面でこそ、特にこちらがピルを服用していたりすると、コンドームを使わない事がこちらへの信頼やら愛情の証だと思っている男性がいたりするのだが。
それはやっぱり、おかしい。
「チミ等、なんでひとむかし前の『性病』がSTDと呼ばれるに至ったかわかっとらんだろ。性病らしい性病ではないが性接触により感染するものは無数にあるんだぜおい。コンドームでは防げないものもあるにしたって、そこいらへんの認識がちゃんとしていたら信用だの信頼だの愛なんつう言葉はこの場面には出て来ないんだが、どうなのよそれ」と腹の中で思う事多分100回超。それに比べたら、これを耐えかねて口にした回数なんか可愛いもんで。


そしていよいよ、世間の認識だけは変わらないまま、STD(Sexually transmitted disease )はSTI(Sexually transmitted infection)って呼称に移行しつつあるという。その意味するところ、考えてみようね頼むから。
善人の上やチミが愛している人の上だけは病気が通り過ぎて行くなら、オレは本当に誰からも愛されてない人間だと思わないかね(苦笑)
オレが最も信頼していた人間は、若くしてエイズ死してるの皆さんにお話ししたのにね。それでもまだ「信頼」って言うか?(「愛だ信頼だは病気をなんら防げない」とオレがとても怒るのは、「息子のとーちゃん」である彼との経緯のせいもある。っていうか、これがとても影響している)


感染については、確立を論じてもしょうがないところでもある。確かにHIVはそんなに感染力が高くないウイルスで、かつてHIVポジティヴのパートナーがいたオレは完全コンドーム使用、オーラルセックスの際もあちらはコンドーム装着、こちらににはデンタルダム(薄いゴム皮膜)をかぶせて細心の注意を払っていたしていたから当然と言えば当然なのだが、感染はしなかった。*1


とにかく、結果としては感染するかしないかの2つにひとつなんだが、お前等感染したときの影響とかあとしまつのこととか、そっち全然見ないよなと、オレはずっと腹を立てていた。
オレ1人だけではコントロールしようがないところまでオレだけでコントロールしろと言われているようで、いや実際彼らが言ってるのはそういうことで、オレはいつも腹を立てていたのだ。この怒りが恋愛している状況に混ざると、もうしんどい事この上ない。これ、孤独にされてる事への怒りでもあるしね。


仕事では、そのへん葛藤が少ないかまったくないのはまだいい。
客に「怖くないの?」と訊かれれば、オレはそこんところ誤魔化せないから「何度かクラミジアも淋菌も罹ったし、雑菌感染はしょっちゅうあるし、怖いですよ。でもこれやらないとフォトジェニックな子でさえなかなか選ばれないし、店も『お客を大事にしていない』って責めるし、何より、食べて行けませんから」ときっぱり言う。商売の上では嘘がつけた方がずっとお得だが、ここはもう耐えられないのではっきり言う。
スキン接客の女子でも、しばしば常連客にはこっそりノースキンのサービスをする事があるらしいが、それも店は把握しても黙っている。なんせそれこそが店の意にかなう事なので。


皆「自分だけは大丈夫」と思っているらしい。そして、売春のあり方は現状、客のそういう都合のいい願いに「そうそう。大丈夫大丈夫」とお追従をする。
そんなわけないに決まってんじゃーん、と現場で言ってしまうのは、まぁ営業戦略上、バカのやる事だ。が、もはや耐え難いし、実際オレはリスクに晒されていて、オレとなんのバリアもなく接触を持つ客達もまたリスクに晒されているのだ。
ここんところをしっかり認識していただかないと、コンドームを使うか使わないかは検討すらされない。
しかしこれ、現場でやったって賽の河原の鬼の前で石を積んでるような作業だ。

*1:しかし、そうやって唾と汗を除く体液はバリアをしていたのに、息子はできてしまったのであった。すごいな生命