想定あるいは要求されるレベルと現実の食い違い

ネット上である程度発言している現役あるいはもとセックスワーカーさん達は、ある程度以上の性感染症に関する知識を持ち合わせ、高い関心を示している人が多い。
自分もそうなるのかな。


なんせこちとら、七転八倒あげくショックを起こして病院搬送の憂き目に遭うところから幕開けした子宮内膜症発覚からすでに22年、合意の上でのセックス開始からは嫌な話だがもはや27年、それだけ無駄にある程度以上意識的に自分の生殖器とつきあわされてるわけだ。セックスワークの世界にも足を踏み入れて20年以上が経過。…うわー。


まぁ、「この程度の知識」ではある。学会やワークショップに頑張って足を運ぶでもなく、ただ、ネット中心、あとはいくばくかの書籍で自分の身体に関連している事、あるいはこれから関連しそうな事の情報を、ぼんやりしていてもひっかかってくる範囲でキャッチしているに過ぎないのだが。それでも、平均的なところより持っている情報は多くなる。


前述の、吉原の婦人科女医さんの説明にしても、あちらは我々セックスワーカーが自分が何をしているかをよくよく承知の上で、いろいろわきまえているという前提でやっているのであろう。
しかし、しかしね先生。実態、そんな上等なもんじゃないよ。


で、これは今表に出て活動してくれている方達への批判ではなく。
ネット上で性感染症の知識を啓蒙啓発してくれているセックスワーカーさん達と、そこここの歓楽街にいるありふれたセックスワーカーさん達は、現実としてとても遠いんだよねぇ…。
若い頃の自分が、特にまだパソコン通信の時代の頃に発信した情報についてもそれは思うんだけど、「正しい」情報を幾ら示されたところで、正しくやっちゃったら、やっぱり稼げないのよこの業界。もう残念で残念で仕方ない話なんだけどね。


あれからますます業界の女子全体の人数は増えてるだろうし、世の中いよいよみんながお金使わないし使えないし、切羽詰まってたら危険承知でやらなきゃどにもならない、もっとひどい話、それやったってどうにかなるかどうか分からないところまで現在は来てる訳で。
その前提含みで考えて行かないと、正論はますます手の届かない高いところに行っちゃうばかりでさ。分かっていても手が届かない正論には、みんな振り向かないというか、かえってつらくなるばっかりだから、むしろ見たくないって向きもかなりあろうよね。


自分の場合、ある程度を分かっていて、いや少なくともそういうつもりで正論じゃないとこに向いた訳で、こりゃもう相当なダブルバインドなんですがね。
そこに挟まるくらいなら、正論なんか最初から知りたくない見たくないって感じになっちゃってんのが現在の多数派なんじゃないかな。
なんともなんだけど、正論掲げる側もそれをまずは認知せにゃいかんよね。
そういう分断もくっきりあるよなぁと、特にネットであれこれ見ていると感じてしまうんだよねぇ。


なにげに、風俗ユーザー向けのポータルとか品評サイトで、怪談あるいはケガレとしての話じゃなく性感染症知識を扱ってくれるところまで来ないと、話がなんも始まらないよなぁ。
現状、風俗ユーザーにとって性感染症の話は、そういうオバケの話と同列扱いで、そこ放置してセックスワーカーに幾ら啓発やったところで、需要のありようは変わらないまんまだもんな。