どうにか大人になりそうな人のバーチャル自立経費と家計簿

ロングランで20越えブクマをいただいた娘さんの家庭科授業「自立計画編」であるが。
「なんか、皆さん関心持って見てくれたみたいだよ」と言ったら、娘さんが授業で使用したプリントをがさがさとあさって、その後の「一人暮らし家計の予算立て」に至るまで、出して来てくれた。「公開するならどうぞお使いください」だそうである。それじゃありがたく。


授業は、まず一人暮らしの物件決めからであった。
自分で住宅情報誌から探すか、家庭科教諭があらかじめ選んだ都営新宿線江戸川区内あるいは東急田園都市線川崎市内の物件により、敷金礼金に前家賃に仲介手数料そして火災保険まで一式計算して、費用を出せと。
で、うちの娘が選んで来たのは「それうちの徒歩圏だろ」という同じ区内の物件…。そうか、そんなに本気で好きかこの界隈が。


その授業単元をやっていた当時、「家賃と管理費が込み込み物件よりは、まだ家賃が低めで管理費が高めの物件の方がおすすめ」と言ったら、娘さんが首を傾げていた。「…そうすると、ずっと住み続ける前提になるけど、契約更新の時に気持ちだけとはいえお得なんだよ。あと、仲介手数料も家賃本体にかかるものだからやっぱり幾らかは安くなる」「お、なるほど」
納得した娘が選んだ物件は、こんな感じであった。


    家賃(1ヶ月)・ 70,000円
   管理費(1ヶ月)・ 5,000円
    礼金(1ヶ月)・ 70,000円
    敷金(2ヶ月)・140,000円
仲介手数料(1/2ヶ月) ・ 35,000円
   火災保険(2年)・20,000円
     契約時合計 ・340,000円


物件概要・鉄骨マンション・1DK、山手線日暮里駅徒歩9分、
     バルコニー有、エアコン付き、ガスコンロ付き、
     押し入れ収納一間半、室内洗濯機置き場あり
     バストイレ別、築24年 5階建ての3階


築年数はやや古めだが、かなり条件のいい単身者向けマンションではないかと。
ただ、駅からの距離が徒歩10分近い割には、家賃設定は高めかなという気がしなくもなくもない。


次は、引っ越し費用をどうするか問題。
もし娘さんが実家から独立する場合、持って行くのは布団と衣類と本とCDくらいなもので、あとの家財道具はいちからまっさらに揃える事になる。
だとすると、「一人暮らし専用コンテナ引っ越し」ってやつでじゅうぶんすぎる。
最悪、家から家族全員で協力して、人海戦術引っ越し、あるいはレンタカー借りてももっと安く上がる。


引っ越し費用・25,000円(大手引っ越し会社単身プラン利用)


さて、次は家財道具編である。
「この際、お値段以上ニトリとか、そのへん多用しまくりだな」
「若いもんはそれで仕方ないと思います」


家電製品・家具
単身者新生活セット・64,800円
  オーブンレンジ・17,800円
      扇風機・ 3,000円
  ヘアドライヤー・ 1,480円
薄型突っ張り式本棚・15,000円
      食器棚・ 3,000円
     ちゃぶ台・ 3,000円
  座布団(2枚)・ 2,000円
カーテン(2箇所)・10,000円
  家電・家具合計・120,080円


単身者新生活セットの内訳は、冷蔵庫(150リットル)、洗濯機(4.5キロ洗い)、炊飯器(3合炊き)、スチームアイロン、アイロン台、電気掃除機、となっている。
本人に「一人暮らしなら自炊で行きます」の意志が強いので、最初からある程度の調理家電を揃えた。この物件、ガスコンロはついているとのことなので買わない。


食器やら調理器具やら洗濯回りの小物はどうするのよと思ったが、この授業ではどうも、そのへんは考慮に入れないらしい。
まぁ、うちの調理スタイルを踏襲する気なら、中華鍋にフライパン、直径15センチ程度の行平鍋、煮込みもパスタ麺類も茹でられる深めの鍋があればスタートはどうにでもなるし、そこいらへん一式、多めに見積もっても別枠で2万あれば事足りるであろう。百均とニトリで揃えたらその半分以下で済むな。


さて、これらを合計して、自立イニシャルコストは485,080円となった。
ここに前述の通り、細かい家財道具の購入費用を足せばだいたい50万円というところであろう。
家庭科の教諭いわく「60万円以内なら、かなり頑張って経済的にやれています」とのことである。そうなんだろうな。


さて、スタート費用が出たところで、新生活の日々の費用、家計の予算設計である。
娘さんにどういうライフスタイルを考えているか聞いたところ、「基本自炊。どうせおかずが余るから、お昼の弁当もできるだけ作って持って行きたい。でも昼に週1回くらいは外にランチ食べに行きたいし、月に一回は外食すると思う。自分は酒は飲まないだろうし人付き合いもあんまり良くないまんまだろうから、あんまり外食費は考えてない。だからそんなに交際費もかからない」と、きっぱりしていた。


「参考までですが、なおちゃんは一人暮らしの時に食費を幾らくらいかけてましたか」とも訊かれたので、「今の日暮里とものすごく物価が違うわけじゃない八王子の田舎に住んでいて、2万くらい。それでじゅうぶんバリエーションは付けられたし、紅茶もリーフで買ったりできたよ。ただ、自分の場合はやたら自宅で振る舞いメシしてたけど、そのぶん農家出身の料理ができない友達から野菜やら米もらって、浮いていたところもあったかも知れない」と返答。そう、当時のオレのあだ名は「レストラン高村亭(仮名)」だったのである…。
一人暮らし最初の友達も、うちの台所から流れ出した料理の匂いで作ったんだ…。


娘さん、あれこれ考えていたが、「水道光熱費とか交通費に余裕を持たせておくと、逆に節約が励みになるかも知れませんなー」とかぼやきだし、猛然とこういう月間予算を建てた。


   食費・25,000円
  住居費・75,000円
水道光熱費・11,000円
  衣服費・ 8,000円
保険医療費・ 6000円(美容室代も含む)
交通通信費・20,000円
  教育費・10,000円(茶道を続ける前提らしい)
教養娯楽費・10,000円
  交際費・ 3,000円(「同僚さんの慶弔費は出さないと」)
生活費合計・168,000円


ちなみに、学校から参考事例として出された収入は、大卒平均初任給手取りの178,092円なり。これは、前にもぼやいたけど、ちと甘いw
「おお、結構多めに見積もったのに、1万円余っているではありませんか」と娘さん。うむ、なんとかそうなったな。「でも、できれば15万円台に実際の出費を抑えられるといいかなぁ。」「ふむ」
「ボーナスの出る会社に勤められたら、旅行費用とか高い衣類とかはそっちから出します」とのこと。まぁ、その考え方は妥当ではあろうねぇ。しかし、チミ等の年代だと、もう「ボーナスの出る会社」には「勤められたら」って感じなのよねぇ。ラッキー、って感じなのよねぇ。


こういうことは、「家から独立してやる!」と意気込んでいる子供でもなかなか詳細な金額を出せないものだし、いい授業をやってくれたなと思う。
いろんなことを度外視すれば、そりゃ相当に少ない額で暮らして行く事もできるのだが。最低限の快適やら健康やらを守って暮らして行くとなると、ただ切り詰めるだけというのも好ましくない。
この授業の最中は、娘さんはやたらうちの家計当座帳や家計簿を見ていた。「1人になったら、単純に食費が1/3になるっていうものでもないのですね」なんてことも考えたらしい。そうなのです。一人暮らしは裁量権幾らでもあるけど、どうしても割高なんだよね。