オレは競わない

オレは、限られて入るがある程度裁量可能な金を算段してまともなものを食べたいし、ある程度は住まいを整えて快適に暮らしたいし、本も読みたいし音楽も聴きたいしたまには映画も見たい。
で、そうやって裁量して暮らすだけの金が入れば、仕事場でのランキングなんてのはどうでもいい。


今仕事をしているセックス産業について、「ここに正義はあるのか?」という思いはあるが、その反面、「ほとんどの仕事場がそうであるように、ここも、雇用者側が自分の頑張りに自分の期待するように報いてくれるという事はない」と思っている。そういうところで、ここは確かに自営業であろう。
ある程度の収入があれば、あとは自分がそれをどう裁量して暮らすかが最大の問題。その自分の生活に回す余力すら店が仕事に回せと言い出すなら、やなこった。
先日、店に経営陣のおえらいさんが来て、女子おのおの自営業者である自覚をってな話をしていたが、なんの悪い冗談かと。オレ等が真実自営業者なら、店はなにゆえオレ等を「管理」しているのか? それ、350年くらい前、いや多分さらにずっともっと前から続いてる、タチの悪い管理側の逃げ口上だよねぇ。


ここしばらく仕事場で、ますます同僚の皆様が声高に自分は報われていないと口にするようになった。それはそうだなと思う。しかし、ここはもとからそういうところなんではないのか。そして、ほかもそういうところではなかったか。
まー、居心地は悪いですよはい。指名数に対して分不相応にフリーもらってきている人間としちゃ。目の前でずっと「どうして自分の指名率でこれしかフリーが?」って話が出るのは。
「でもなー、オレもオレで降って来たフリーは選べない訳でなぁ。いささか屑拾い的な仕事もあえて文句言わずに引き受けてるしなぁ」と、自分の居心地の悪さをはぐらかしてみたりして。


オレはすでに、ここで働いて自分の暮らしをこれ以上荒らさないために、たいへん譲歩したくなかったところを店にしたがって譲歩した。(スキン接客からノースキンに転向ってやつですね)
もう譲れるものはない。
あれを譲ってもなお、割合心身安定してる状態の自分がまったく食べて行けなくなるようなら、フロントのやり方をどうこう言う前に、オレは黙って考えてそれからどっかに面接行って、今の店を辞めるのだろう。


まぁ、比較的早い出勤時間のオレのフリー獲得率の良さって、スキン接客が多い早番さんへの見せしめなんだよね。それは承知してる。そして、ずっと内心複雑でいる。
「こいつ程度に客選んで接客していても、スキン接客やめたらこんなにフリーがついちゃうんだよ」って、店はオレを通して他の同僚さん達に言ってると。
で、そもそういうメッセージを突きつけて来るところに、なんのフェアネスを期待しようかね。


とにかく、また明日から仕事である。
内心いろいろぶつくさ考え続けていたら、また腸に新しい潰瘍ができてしまったが、本人の自覚としてはけっこう元気だ。仕事もできるし家事もできる。
店はいろいろ焚き付けたいらしいが、オレはこの先も誰に勝ちたいとか追いつきたいとか追い越したいとかまったく考えられずに、「あー、この5日間は生活口座の通帳に幾ら挟んで、化粧品買うのに幾ら財布に残して、子供の学費でもう幾ら残して、だからトータルでこんだけ稼ぎたい」ということばかりを考える。


競ったところで、トータルでオレ、幸せにはならんからなぁ。