腹を壊しつつ思い出す児童相談所との邂逅

新宿の児童一時保護センターに6年前あたりいた精神科医、ありゃ、かえすがえす思うに、つくづくと駄目だった。
「こういう質の悪い人材を雇ってある程度の権限を持たせているというだけで、オレはこの機関を信用できない」と思ったものである。


ともあれ、いつかも書いたが、あの精神科医が端的な例であったように、児童相談所、ひいては役所というものが「児童虐待というものをやらかす親」とレッテルを貼ったものをどのように見なすのかが伺えたのは興味深かったが、まぁ要するに、こちらの個々の顔、生活なんてのは見やしないのだな。
多忙さは相当のものであろうけど、それでも、短い面談時間の中から汲み取ろうとすれば汲み取れるものであるはずなんだけどね、そういうことは。


子供達から聞いて一番ショックだったのは、確かに保護者から虐待を受けていた子供達も相当数いるであろう一時保護センターで、職員は手に負えない子供に対してまず「ハンカツ*1」というペナルティを与えていた、というもの。


虐待の疑いは晴れても、しばらくは「不適切な養育の疑い」というわけのわからない、いやまぁそうなんだろうけどそれが何か、という件で、こちらが児童相談所まで足を運ばされ、こちらの住まいの様子やら家庭での親子の様子をあちらが観察しに来る事もなく(これ、すごく変だよな)、心理士さんとの面談に通わされたのだが。
…やらされる事が手芸とかお菓子作りとかで。それがまた、あちらの有り難い意図が見え見えなのだよな。


クッキーを焼かされた日に、「いや、こんなところでわざわざ他人のレシピ本見せられて『こういう機会なんてまずないでしょう』って勘違いに晒されるくらいなら、もう来ないよオレ。これは、うちでできる事で、うちでたびたびやってる事だっつうに」と呆れ果て、オレは児童相談所に、意味のないカウンセリングに時間を取り上げて使わされるなら、私は私の子供達ともっと生活の中でやれる事があります、と宣言してさようならしたのだった。


役所に「親がまともに育てていない」と判断された子供は、如何に低く見積もられた「まともな生活」とやらをあちらから押し付けられるのかを知ったのは貴重な機会だったが、できればそんなもの子供達に体験させたくもなかった事である。
何をどう間違えても、オレは我が子達が如何にポカをやらかそうと、児童相談所に行った方が良かったんじゃないのか、とだけは絶対に言えないのだった。


それにしてもだな、かの精神科女史。娘さん、13才あたりからはたったひとりでもまともに刃物、使えてるよ。あれからたった4年で。
刃物ははさみ含めてまったく置かないようにするか、オレが全部まとめて外出先に逐一持ち歩くか、まったく手の届かないところに施錠して保管するかを今後ずっと続けるしかないと言い切った貴女があの施設にいたというのは、いまだオレの懸念のひとつですな。
うちの娘さん手芸も当時から得意だったけど、針も駄目ってことだろう。…はさみと針なしで手芸はでけんよ。

*1:どうやら「半活」のことらしい。食事や入浴やトイレといった最低限の生活活動以外は自由を与えず、ずっと正座させておくというもの。で、その具体的なペナルティ基準はどういうものかと子供達に訊いたら、「同室にいた子は、おねしょして怒られるのが怖くて濡れた下着を部屋に隠したらハンカツにされた」と息子。おい、実際虐待を受けていた子供ならそれくらいの自己防衛は普通にするだろう。なんだそれ。今はそのような「役所による児童虐待」は改善されている事を切に願う