最初の店の店長が言った

10年半ほど前、吉原に足を踏み入れた時、最初の店の店長でその後それなりに長い間つきあう事になった20才年上のおじさんが言った。
「店では架空のキャラを作って演じた方がいい」


で、オレはそこから店ではある程度架空のキャラ設定を作って演じている訳なのだが、自分がやってる事だから、この自分そのものでやってる部分もある程度は。
…うん、ある程度は。「どういう雰囲気で接して、どういうサービスを提供するのか」を実地でやってるのは、結局自分であるんだけど。


それなりに長い事この仕事を続けていてようやく思うのは、「キャラクターの問題はともかく、割とこの自分が思いついたままに動いていいんだな」だったりもする。
やっていいのかどうかを躊躇するよりは、やったもん勝ちっぽい。


そのへんはともかく。
ちょいと前、パソコン通信時代にとあるフォーラムの同じ会議室(テーマ付きの掲示板みたいなもん。スレッド機能付きの)で話をした人物から、「店に行きたいので店舗と源氏名を教えて欲しい」というメールが来て、本来のサービスを受けたい気持ちもあるが、パソコン通信時代の昔話がしたいと言われた。


オレの方は、およそそのご仁としたい昔話はない。聞きたい話もない。
ああ、あのへんとかあのへんの暴露話でもしたいのかね、と思い当たらない事も無かったが、それは当時も今も、オレが聞かされたところでなんら楽しくない話であろう。むしろそのへんの話を引っ張り出して来られた日には、ますますそのご仁の品位を疑いかねないところなので、「積極的に聞きたくない」くらいであった。
それは結局「昔話を共有してるほど、オレ等は親しくないよ」ということで、そのまんまそれを書いてお断りした。


時々。このまんまのオレの仕事を買いたいという変わった人が現れるのだが、ここでこれを書いているオレは店にはいない。客の前には姿を現さない。
会社で会社員やってたって、そんなもんだろうに。