ふっと娘さんが思い出したように

「自分のお父さんって人、ボクが受験生なの多分知ってるはずだけど、なんも言って来ないね」と、昨日突然きょとんとした顔で言った。
息子は「いやまぁ、ほら、『困ってたら言って来るはずです』って断言して、こいつは駄目だまったく使い物にならない、って児童相談所に呆れられた人だから」とうんざり顔で言った。…息子の方がやはり、怨念は強いな。


「でもさ。まぁあれだ。あちらさんがもっと年とって急に詫びを入れたい気分になって君等に連絡して来たら、その時は受け入れておやんなさいよ。いいよ、あちらのご実家からはよくしてもらってるんだし。あちらのおじいちゃんおばあちゃん達からの対応が、自分たちの息子の行動についてどう判断してるかを語ってるんだからさ」と苦笑いしつつ答えておくと、娘は「お父さんって人がそういう反省をずっとしないままでいたら、どうなんだろう」となかなかシビアな突っ込みを入れて来た。


で、「…だとしたら、彼は自分の人生に今後もずっと意趣返しやら復讐やらをされ続けるんだろうから、可哀想だとは思うけど、しょうがないよねぇ」とオレも相当にひどい事を言ってみた。
娘は「そうか、ちゃんと復讐はされるのか」と静かに納得していた。
…子供って結構、怖いよなぁ。


しかし児童相談所、子供にあんなにストレートに「あっちの親はなんにもする気が無い。貴方達に対してこういう事を言っている」と伝えるところだとはな。
当時のうちの連中は、小3と小5だぞ。
逆に、オレが大変慌てて申し訳ないと思っていたというのも、子供達に伝わってたんだけど。もちろん子供達に直接謝罪もした。
で、親が子供を「必要ない」と思っていると受け取られかねない行動をとれば、もう片方の親は「もう全身全霊で全力で必要!」とこうやって騒いでいた事だし、子供の方はすごーく厳しく「あれは期待するだけ無駄な人。いないのと同じ人」と切り捨ててしまうのだなぁ。


ちなみに、息子は情念の深い男なのでまだひたすらにじたーっと怒り続けているが、娘はこのように、たまに「そういえば、自分にはもう1人、親ってものがいたよな」と思い出したりはするものの、オレに「なおちゃん1人で大変そうだけど、やっぱりあれはあてにならないんだよね?」とけろっとした顔で確認を求めて、「そういうことだな」と答えられては納得して、おしまい、なのだった。
どちらがよりひどい「忘却」であり「愛の反対」なのかは、言うまでもあるまい。