もしあの猫が彼でなくても

失う事はとてもつらいが、それでもそのいつか必ず来るつらさのために、最初から何も手にしない、ということはオレはしないのだなぁ。
それは、よく分かった。


いなくなられるのはとても辛いし寂しいけど、それでも、またそういう事があっても、オレはもう大丈夫なのだなぁというのも、分かった。


とらちゃんの死後、夢には滅多に出て来ない息子のとーちゃんが出て来て「なおさん、アンタ、もう大丈夫でしょ?」と言ったのだが、彼の死後15年と半も経って、ようやくオレはもう大丈夫なんだなという確信を持つに至ったという。
はい、大丈夫です。人に死なれても、猫に死なれても、日々を暮らしてます。もうそれで長い間自分の中の時間が停止するというのは、ないらしいよ。


それにしてもとらちゃん、君が何者であったにしても、君のあのいちいち不思議にニュアンスのあった表情や声音や仕草、あれは本当に、良かったよ。