サラリーマンソープ嬢汎用型

店は嘘をつく。まぁいつものことだ。会社が嘘をつくのと一緒で。
本指名の本数が多い女子に優先的にフリーをつけますよ、って、そりゃ嘘だなと、店の偉いさんの話を聞いていつも思う。


風俗業にも来客のピーク時間ってもんがある。そして、ピーク時間から外れた出勤時間のオレの場合でさえ、本指名のお客は何故か「口開け」、朝一番の客になりたがる傾向がある。
オレが本指名のお客を朝一番に迎えて帰した頃が、本指名をたくさん稼ぎ出す皆様が出勤して、そのお客を迎えている時間である。かくしてオレはフリー客に遭遇してしまう。本指名を多く稼ぐ女子の枠がようやく開く頃には、客のピーク時間は過ぎてしまっている。
別に意図して今の出勤時間にした訳じゃないけど、気が付いたらそういうことになっていてた。


同じ出勤時間に、オレより3才以上若く、BMI数値がもう2ばかり低くなおかつオレ程度に仕事をする、しかもオレと同程度に指名を取るノースキン接客可能女子がやってきたら、オレの稼ぎは激減するのは確実である。
が、なかなかこれら全部を満たす女子は現れず、オレは店にある程度便利に使われつつ、のたりくたりと仕事の正味にばかり勝負をかけて過ごせてしまっているのであった。


つまらなくてかつしっかりした化粧(それが「愛されメイク」とやらの一番適当な要約だわな)をして、衣装はある程度とっかえひっかえして、体重は1度がっつり減らしたら、もう3キロ以内の増減にとどめる。BMI数値(体重(kg)/身長(m)の二乗)は25未満なら大衆店レベルではなんとかなる。身体がだらしなくゆるんでいる、という印象さえ客に与えなければ。オレなんかこの指数、24もある。標準の範囲内ギリギリってやつだな。
髪はせめて鎖骨以上の長さで、明るすぎない茶色かいっそ黒髪。
そういう「つまーんなーい」見た目とその維持努力をする女子が、一番汎用性が高いんだわな。この業界。
これやるの、本当につまんないぞー。でも金が欲しいんだからやるしかない。
衣装はともかく、本当につまらん「女装」をしているものである。(…まぁ、とがった面白い女装なんてやったら、それはドラァグクィーンになっちゃうからな)


で、出勤前にとにかくシャワー浴びてきっちり歯を磨いて髪を乾かしてある程度セットしてくれば(濡れ髪には濡れ髪でフェチもいるが)、すっぴんでもたいてい、店は許す。すっぴんであることより、濡れ髪のままやぼさぼさ状態の髪で出勤する方が、店からの反応はかんばしくない。
顔はどうせ粉はたいて(一瞬で落ちるけどパウダリーファンデーションよりルースパウダーの方が、塗るときは早いからな)、眉描いて紅引けば、朝一番で客が来たり写真が決まってはいご対面、となっても、「化粧した顔」なんて取り繕える。
あとできっちり化粧しなおしておけば、まずほとんどの店では怒られまいよ。


「オレはダイエットってもんはしないけど、節制ってのなら、してるよな」と、密かに「基準スーツ」と呼んでいるアンサンブルスーツを着ながらもの思うこの秋である。
このアンサンブルのキャミソールには横開きファスナーがついているのだが、これが脇に食い込んで痛かったら、オレは商品としてそろそろ危険な状態にある。
(夏も夏とて「基準ワンピース・ドレス」はある)
オレは自分の身体にいちいちメジャーは当てないが、ここ2年ばかりは時々そうやって、自分が勝手にでかくなりすぎる事は規制している。


これからの暇な季節、待機にはドレスやワンピースの方がスーツよりもずっと楽だ。ストレッチが効いていればなお快適だが。
だが、そんなものを着てしまったらオレは自分の身体をまったくコントロールできなくなる程度にはだらしない。コントロールが外れてしまったら、オレは家族に対する責任が果たせない。
オレは自分に過剰な抑制はかけないが、ある程度のコントロールはかけている。
それを店が買ってくれている限りは、このコントロールを外す訳にはいかんだろうな。
…またこれが、適度な負荷のメンタルトレーニングでもあるんだよなぁ。


オレより一回り以上年下の新人のお嬢さんが「この店に入ってまだ3本以上ついたことがない」と嘆いていたが、彼女が上に書いた事を実行してくれれば、稼ぎが改善される事は約束するわいな。