なまじ「この先」を認知できる動物だからつらいのか
深夜、ベランダに出て「戻ってこい!」と絶叫したい衝動にかられ、それをとどめて息を吸い上げたあとでまた泣いている始末。
宵のうち、風呂に入ろうとしている娘の髪にやたらに太い白髪がくっついているのを見つけて取ってやろうとしたら、猫のひげだった。
彼の身体は全部彼のものだからと、遺毛も何も猫の身体からはもらわずに送り出したのだが、もらうのも辛いのにもらわないのも辛いと思っていた飼い主達を見かねて猫がプレゼントでもしてくれたのかと、またも娘と2人でぼろぼろ泣いた。
せっかくのプレゼントは小さいジップバッグに大事にしまった上で、フェルトマスコットの「とらちゃんレプリカ」の箱に収めた。彼のまたたびタオルの半分はこのレプリカの敷物にした。
息子のとーちゃんが死んでもオレは生きて来たから、猫が死んでも生きて行く自分なのは分かっている。けれどやっぱり何度繰り返しても、死に別れるのは辛いのだ。まして天命を生き切ってないような若さで逝かれてしまうのはたまらない。
ちょっと、いやどれだけかかるか分からないけど時間をくれよな、長らえさせてやれなかった飼い主が言うのもおこがましいけど、どうしてもという期限が決められてないならできるだけ時間をくれよなと、戻ってこいと叫べなかった自分は呟いてみる。
だけど、叫んだっていいんだろうなと思う。
- 作者: 須藤真澄
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- 発売日: 2006/01/16
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