何もしなければプラス評価はない

話を本日遭遇したバカ客に戻そう。
プレイに関してはほとんどこっちを触らず(触っていいよという態度や隙はじゅーぶん、差し出した)、マットでもこっちが上になっている間下から腰を動かす事もなく、しかし言うのだ。「ねえ、いってよ。オレ自分がいくのより女の人をいかせる方が嬉しいんだよ」と。


いかせる、ってああた。
立ててやったちんちんにまたがらせてこっちに全面的に腰使わせておいて、いかせる、ってこっちに受動形被せて来ますか。受動形は君に被せられこそすれ、オレにはこの場面では全くないのよ。よっぽど不自然な受動形にしないと無理だわそりゃ。この場面でもしオレがいったとしたら、それは「勝手に自分が気持ちよくなるようにして勝手に自分でいっちゃった」ってやつですよ。


そのプロセスには、君のちんちんが挿入された物体として存在しているだけで、君の能動性はまったくここにないのです。はっきり言ってしまえば、このセックスの流れの中に君の行動は「ちんちん立たせてもらって立てた」以上の関与は、なんもねぇな。
しかし、こういう客の存在それじたいは珍しくないんだよな。
むしろ、若い客の中にはこういうの、どんどん増えてる。


そりゃ、おまんこの中にごりごり爪立てられて指入れされたり、「それ、お前も絶対痛いだろう」って角度で挿入された上に無茶に大きいストロークでピストンされるよりはずっとマシなんだけど、それはもう客に対してであってもマイナス評価が付くんだけど、なにもしなければマイナスよりはましとしても、評価はゼロ、なんだがなぁ。
で、プレイの正味を外したところの会話でありとあらゆることを外しているのを喋れば喋るほど顕してしまったりするもんだから、「…ああ、そりゃなるほど、こりゃあもう素人童貞のままでいるしかなかろうなぁ」とオレは悲しく納得してしまうのだった。


で、そのお客はどうにかして女性とつきあいたいと言っていて、ギター教えてくれと言ったのももしかしたら店の外でオレが会ってくれるんじゃないかと考えたかららしいんだけど、「ソープ嬢のプライベートは高いですよ」とにやりと笑って言ったら、「お金とるんだ」とびっくりしていたので、「当たり前でしよう。お店から離れてリフレッシュするはずの時間を、しかも教えてもらうんじゃなくて教えてあげるために使うんだもの」とすぱっと言っても、はっともせず釈然としない顔を見せたのだった。(オレが暇人を糾弾するのは、暇人である客は斯様に人の時間をもらうということに鈍感だからである)


しかし、彼らは女性とつきあってどういう時間を共有するつもりでいるのだろう?
もしこいつと飯を食べても、映画を観ても、一緒に音楽を聴いても、なんらシェアできるものはなくて楽しくない事はたった1時間半一緒にいただけのオレでも容易に分かる。こいつの側からは、ただ女性と時間がともにできれば楽しいのだろうか?


オレがオタク客にフレンドリーなのは、彼らにはちゃんと楽しい事があるからだ。
それがオレの興味分野と重複すれば、いや、しなくてもしばしばプレイの合間に交わす会話はお互いに本当に楽しい。彼らがちょっと走り過ぎてマニアックな話に行き過ぎてもそれはご愛嬌というものだ。
が、箸にも棒にもかからない客というのは、趣味と言ったって、前述の「皆が集まっている場所に、皆が集まっているからという理由で行ってみて」、実際のところは本人、楽しくも何ともなかったりするもんだから「ことごとく失敗している」のだよな。
皆が集まっているところに行けば「モテ」があるかと言えば、行っただけでは、なかろうよ。しかしそれが分かってない彼らは、皆が支持している様子のもののところに行けば、自分も皆から支持してもらえるんじゃないかととんでもない錯覚をする。そして夢破れて首をかしげている。


控え室に戻って同僚さんに「どうして、人ってもてることばかりを目指すと、どんどんもてることから遠ざかっちゃうんでしょうねぇ…」とぼやいてみたが、同僚さんもたまたま前日、お友達とそのテーマで話をしていたんだそうだが、「もてることを目指す」っていうのはすなわち「もう手当たり次第でいい」ってことなんだから、そりゃもう、ダメだよな。
初めて会ったソープ嬢にいきなり外で会おうなんて自分から持ちかけちゃってるうちは、まったくダメだわな。


ともあれ、セックスの場面に限らず、ちゃんと自分からも動いて試行錯誤できる人間は男に限らず幸いなるかな、だし、多少マニアックでも、自分の「好き」がはっきりしてる人間は、もっと幸いなるかな、だよ。うん。