陰部潰瘍が痛む朝に西海岸からの電話がまた来た

週末あたりからまた出てしまった陰部潰瘍がいよいよまともに潰瘍化し(しつこいようだがSTIではなく、ベーチェット病の症状によるものである)、その痛さというよりは不快さのあまりに4時起床。
起きてしまったものはしょうがないし、朝の6時過ぎから資源ゴミに出す段ボールだのジャンプだのマガジンだのをまとめていると、アメリカ西海岸の「OLになりたかった技術系女子サラリーマン」なI将軍もといI嬢から電話。


現在I嬢は「三十路も半ば過ぎてはじめてラブコメ男に遭遇しラブコメはたまた銀色夏生の詩のようなシチュエーションにいる」という、電話のあっちとこっちで痒さのあまり身をよじってしまいそうなありさま。
オール西海岸ロケしかしキャストは全員日本人、しかも主演俳優が四十路、主演女優は三十路半ばって、それがラブコメでもあんまりだよなぁと我々はぼそぼそと語り合うのであった。


本日の我々の会話のトピックスのキモは、「普通の女子は、我々にとってもっとも据わりが悪く不安定にしか思えないところで安定して安住できるようだ」というあたりか。
ちなみにI嬢、前にも書いたような気がするが、いちおうオレの「元彼女」なのである。もうとっくに友人歴の方が長いが。
お互い結婚した経験があり、同い年でもある。
バイというセクシュアリティも共通だが、我々が最もシンパシーを持てる点は「どうも自分は女子という存在や集団の外側にいる気がしてしょうがない」というところで、なおかつ、その外側にいる状態も決してケツの据わりがいいものではない、というしょうがないところだろうな。


彼女もオレもよく「精神的ガス欠」を起こすたちであり、彼女はもともと華奢でスタミナがない身体で持病もあり、オレもオレで婦人科系疾患がRPGのマップ上のモンスターのように次々と出て来たあげく、ベーチェット病を宣告される始末。
どちらも安定剤常用者でもある。なんというか、しょうもない。
そういう我々がなぜいまだ世の中から遁走せずにいて、あまつさえ彼女は年中外資系転職エージェントからオファーが来るようなキャリアを築いてしまい、オレはそう遠くなく子供2人を育て上げようとしているのか、お互い、相手の事についてはともかく、それぞれ自分についてさっぱり、わからない。


が、とにかく、I嬢もオレもこのところ、たまに立ち止まってしゃがみこんだりもするが、止まったままではいなくなった。
子供を持たなかった彼女でも、世に出るとかなりの強制力が周囲から働いて、三十路も半ばになるとその幾つものしがらみによって働かざるを得なくなっている。オレもオレで、10年前はいくらなんでもこの状況は予測してなかったなと思うようなところにいて、良くも悪くも遁走しようがない。
無理矢理いいように見れば、オレ等それぞれこの10年のうちに少しは図太くなったのだ。少し、ほんのわずかにすこしでしかないが、やり過ごし方を憶え、手を抜く方法を身に付けつつある。


しかし、そういう乗り越え方やら身の処し方を身に付けて来たと気付くたびに感じるやるせなさはいったいなんなのであろうかとも、我々はつい口に出し合ってしまうのである。
いや、このやるせなさが理解できる相手がいることはとてもありがたいのだが。
やるせなさ自体はどうしようもないからな。