「自分もスガさんと同じ人間です」

去年、大宮ソニックシティでのライヴの折、スガが「斜陽」(「PARADE」収録)が好きだと言う男性ファンが多いという話に絡め、そんな男性ファンから移動中にとっつかまって耳元で言われた、とMCで話していたのが小見出しに引用した台詞。
いやー、さすが私小説大国ニッポンだぜと思いつつ笑ってしまった。


恋愛がもたらすインスタント万能感が見るも無惨に色褪せ打ち砕かれて行くさまを詞にするのに、とりあえず今スガの右に出る作詞家はいないんじゃなかろうか。日本では。
そういう無惨にすら陶酔してるうっとり君でいる歌詞が世の中ではほとんどなのに、スガ、そういう状況を歌詞の主人公ごとばっさり切り捨てちゃうからなぁ。


そんなことを、仕事からの帰りすがらにiPodでこのアルバムを聴きつつ。

TIME

TIME

ちなみに、スガは全部息子の所有。(誕生日等にこちらがプレゼントしたのも多い)


帰宅してから息子と買い物に出て、ふと、「スガの曲に距離置かないで聴いちゃっていいのって、いいところ20代前半までなんだろうな」と言ったら、息子が「それは、そう思いますよ。スガは作る人だからいつまでもあれやっててもいいけど、ライヴで言ってたファンみたいになってたらちょっとねぇ」と苦笑いしていた。冒頭に引用した件はオレと息子の間で語りぐさになっているのである。


「で、どの曲聴いてる時にそんなこと思ったんですか」と息子に訊かれたので、「『カラッポ』聴いててそう思った」と言ったら、何かひどくツボだったようで。思春期って言葉嫌いなんだけど、あえて使う。「最強思春期バカソング」だよな「カラッポ」って。
当時だってとうに三十路過ぎてて、こういう恥ずかしい苛立ちを掘り返して作品化するスガシカオさん、素敵です。


「ところで、今更なんだけど、もしかするとスガのアルバムの1曲目って必ず自信作とか力作だったりする?」と息子に訊くと、本人がライナーやラジオで語っているのを聞いても、実際アルバム聞いていても、全部それは間違いないでしょうと。
「…だよなぁ。そのへんで何かアルバム通して聴いたあとの感じが殿下みたいで」、と言ったら「最後に変にゆるかったり落ちてる曲持って来るところも、似てませんか」と言われた。
ああ(笑)