あらゆる悪意について途方に暮れる

なにかをコントロールしたいという気分は、まぁおよそいい結果を生まない。
ならばコントロール欲求っていうのも悪意のひとつなのかね、などととんでもない飛躍をしてしまいそうな本日のオレの頭の中。


先日は、店の控え室の片隅で、かつてオレに宗教とマルチ商法のダブル勧誘をかけて来た四十路同僚が「マルチは国がまともな商売として認めている。もう名前が知れてしまったマルチは加入しても駄目だがまだ知られてないところの上に食らいつけば儲けられる、マルチは犯罪じゃないけどもう名前がよく知られているようなところに今から入っているようなバカは駄目だ」というようなことを他の同僚をつかまえて言っていて、オレはその内容が聞こえて来るだけでもうかなりグロッキーになっていたのだった。


えーと。とりあえずマルチ商法、所謂連鎖販売取引ってやつは、かなり細かい法規制を遵守すれば「違法ではない」とされるような、しちめんどくさい規制を受けているグレーゾーンの商売でござんすが。
それをまともな商売として認められているという言い換えができちゃうあたり、すごく立派にマルチの人だよなぁ、四十路同僚女史。
そして、彼女のそれらの言葉から、オレはかつて彼女から勧誘されたおりに言われた言葉が如何に欺瞞だらけであったのかの裏付けがガスガスと取れてしまい、ああ、カモだと思われてたのねぇオレったら、と苦笑いを浮かべていたのであった。
なにげに、どうしてマルチ大好きな人って無自覚な権威主義者が多いかね。本人は反権威主義だって言うんだけど。たいていの場合。


今日は今日とて、どっかの匿名掲示板から立ち上ってしまった、「実はもうそこに以前からあったのだけど、ネットというものを通じてようやく可視となる、そしてなってしまった人と人の間にある悪意」というしちめんどくさいものについて、考えていた。
まぁ、言葉そのものが人と人の間を巡っていくうちに、悪意を向けられた人間にそのことを気付かせるって事例の方が、まだやっぱり圧倒的に多数ではあるけど。


匿名であれば悪意の赴くままを書いてしまおうという人間って、とりあえずまぁ、頭が悪いわな。匿名でしかそれを書けないってのは、はなからその悪意が正当なものだとは思ってないからだわな。
そんなもんによって誰かが傷つくのは、オレはすごく、やだな。腹が立つよな。
うん、とりあえず今日、それですごく嫌だった。いつも嫌なんだけど、今日は特に嫌だった。
ああいう傷つけられ方って、本当に理不尽だわな。
んで、何の得があるのかね、この手の相互不信の蔓延ってやつに。すでに相互不信の世界にどっぷり頭のてっぺんまで浸かっていたら、そんなもん、今更なんてことはないのかね。
で、まだこんなことばっかり考えたり書いてるしてるオレは、ただひたすらにおめでたいのかね。


とりあえず、世界を信じたいという気分は、そんなに持ってるのが愚かなもんなのかね。んなこたないと思いたいんだがな。
そしておめでたいオレは、「腐ってる」と一言で斬り捨てたいようなものまで、それは本当に腐ってるんだろうかとひっくり返して確かめようとする悪い癖を持ち続けるのだよな。
このおめでたさは、まぁ、世界を救わない気がするけど。オレも救われてないんだけど。