伝承・継承が困難になっていく

先日、仕事場で、怜悧で美しい同僚の姐さんと話をしていて、この仕事場でも、ごく当たり前の常識であるはずのことからそうでないことまで、先輩格の姐さんから業界歴が浅い女の子への伝承が難しくなって来ている、なんつう話をしていた。


店は、それを分かってないのか、それとも意図的にやっているのかが気になるが、かなり意図的なんじゃないかなこれ。


たとえば、スキン接客で働くにしろノースキン接客で働くにしろ、膣洗浄はやるものなんだが、それをまったく知らないで、何人のお客を接客しようと膣の中を洗わないまま接客していた女子がいたり、逆に、グリンスやらクリアレックスやらイソジンウォッシュのような滅菌力のある洗浄料で膣の中を洗ってしまっていた女子がいたりする。(善玉菌っていうか生桿菌死に絶えて、自浄機能なくなってしまうがな)
昔は、この仕事の講習の最初は、まんこの洗い方を新人女子に教えるところから始めたんだそうな。今もちゃんとやっているところはそうであると思いたい。


「そんなことも教えられないと分からないのか」と驚く向きもあろうが、かつてのオレもこの手の話を聞かされた時それは思ったのだが、そういうもんらしい。
このへん、プロと素人の敷居があるのかないのか曖昧になってきた弊害もあるのかも知れない。
オレ等の仕事は「1日に複数の男性の相手をこなす」というのが前提で、その前提故のお作法というのが当然あるのだが、素人世界には普通、それはないもんな。


かつてはどうも、店というところ、この業界に入って来た新人女子にどういう性的遍歴があろうとなかろうと、貴女はこれからプロになるんですよという言い聞かせを一律それなりにやったのだ。
かつて講習が重視されきちんと行われて来たのは、それは一種の通過儀礼だからだろう。


店の店長あたりがやる講習というのは、多分に女子に対して店の都合を押しつけ飲み込ませるもの、あるいはもっとひどくて、店長氏の個人的趣味ないしは欲求の充足のためにだけ行われるものだったりする場合が多いのだが、先輩姐さんからの講習は当然、まったく違う。女子から女子へ伝承される事の一番大きなテーマは、多分「この現場で如何に身を守るか」というところにあるのだろう。これは、女子間でしかできない。


しかし、近年、風俗ではプロたる事は流行らない。
ヘルスやイメクラのような非本番風俗は、女子の客あしらいを基本的には素人のままにしておくことで、当初はソープランドとの差別化を図っていたんじゃないかと思う。
だけど、もはや置屋にいる売春婦がプロたる事を、多くの客は歓迎しない。
たまに教えを乞いに来る奇特な若いお客もいるが、ほとんどの客は、店の姐さんに駄目を出され、怒られ、自分のセックスのやり方を変えるべきだと言われる事を嫌がる。


昔から吉原で遊んで来たじいちゃんやおとーさんの話を聞くだに、ソープがプロの牙城であった頃は、少なからずここはお客にとっての指導・矯正施設の役割もあったんじゃないのかと思うんだけどね。
で、いにしえのちゃんとしたプロのおねえさんにがっつり怒られて駄目出されて指導されて来た、それを受け入れて来た彼らってのがまた、もろもろ、ちゃんとしてるんだよねぇ…。
オレはああいうふうにお客を教育できてるのかなぁと、考え込んでしまうところでもある。


店は何に鈍感でも、お客の変化には敏感だろう。
大半の客がもはや「わかりやすくプロのおねえさん」というのを望んでない事はひしひしと感じてるだろうけど。


しかしせめて、女子が最低限知っておかないと客の側にも不快だったり迷惑な事くらい教える気はないのか。まんこ洗いの話からして一事が万事ってやつで。
売り上げを追い掛ける事ばかりに忙しいのか、とにかく客あしらいというものを教えたくないのか、ここんところ店で見聞きする事は、本当にどうにもひどい事ばっかりだ。
それでも、簡単に絶望したりはしないけどね。