多分に暴力になりうる事は認識してる

1ヶ月に1回は、ご対面のときから挙動不審で、「ごめんなさい。写真とイメージ違った? もう一度写真選びなおしてもらって、他の女の子に代わりましょうか」などとにっこりしたまま静かに言うと、「あ、いえ、違うんです。自分吉原初めてなんですよ。…っていうか、女性とは初めてなんです…」と言い出す童貞男子のお客に遭遇するオレである事である。


オレは、やさしいんだそうだ。仕事の上では。
童貞だとまでは言わなくても「こういうところは慣れてなくて」と彼らが言えば、優しくて面倒見がいいという理由で店の男性スタッフが勧める事もあるようだし、それがなくてもなんとなくオレは童貞を引き寄せる、と。
1ヶ月に1度それ以上、かなりの高頻度と言えようよ。


これは、かつてプライベートで面白半分に、いやそれなりに面倒は見て幾人もの少年やら青年のはじめての相手をしてしまった祟りに違いない。
たった90分の初体験って、オレは仕事だからこれでしょうがないけど、短いわなぁ。緊張をどうにかしてやるだけで終わりそうな時間だわなぁ。
しかし、お前童貞なんだからそれくらいの事は想定してあらかじめダブル切るだけの金持って来い、とは言えないわなぁ。(無駄に気まずく3時間、っていう最悪のパターンもまったく起きないとは言えないしなぁ。今までそれはなかったけど)


もうとっくに、自分の被害歴などはいつも意識してないけど、オレが自分からはそれなりに相手の身体を丁寧に扱うのは、セックスが暴力と紙一重のところにあるのを知ってしまってるからだよなぁ。しかし、こういう屈託を持ってる自分である故にできない事ってのもある。
せめて何か、傷めいたものを、お客になった彼らが持って帰らないで済むようにはしたいもんで。
いや、セックスは優しく丁寧にやるもんだっていう自分の自分に対する縛りを考えるに、やっぱりオレはかつて加害された事から自由ではないのかな。
でも、とらわれてる故にお門違いの復讐をするがごとく暴力的で一方的であるよりは、自分にとってもマシか。なんにしても、こういう風にしかできないもんね、オレには。


追記・自分の意志でここに来ると決めて、しかも金払って割り切ると決めてやった来たお客に、なんで変に気を回してやっちゃうよ自分、と苦笑いしてしまうのも、いつもの事で。
そして、彼らが自分の中でそのエクスペリエンスをどう位置づけるかは彼らの自由で、後悔したにしろつまんなかったにしろ、なかった事にしちゃうならそんでいいわなと思う。こっちはこれが仕事である以上、いちいちつぶさに憶えていられないんだし。