その猫はどうしても「人間の家」で最期を過ごしたかったらしい

かなり弱った状態で保護していたし、あまりにあまりな食欲のなさや行動から、あまり長くは生きてくれないだろうと覚悟はしていた老雌猫が昨日の夜息を引き取った。
とにかく食欲がなく、いつも水ばかり飲んでいた猫だった。
保護した時からある程度認知症がある様子だったが、栄養失調と脱水がひどくて動物病院に入れた時に発覚したてんかんの発作を抑えるための薬を飲ませてから見る見る弱ってしまい、「もう発作が起きてもしょうがない。自分で動けるようになりたかろうね。食欲も少しは戻るかもしれないからね」とてんかんの薬をやめてしばらく経っての事だった。

実際薬をやめると翌日には、移動途中のひどいふらつきや力尽きてその場で「ぼす」と横倒れになってしまう状態は解消され、この土曜あたりはやたらにうちの中をてこてこと確かな足取りで探索して歩いていた。
「アンタはもう人んちでちょっとを過ごせれば満足だろうけどさ、こっちはそれじゃ寂しいんだよ。もうちょっと長く生きな」などと話しかけつつ日々グルーミングしてやっていたが、自分で自分を毛繕いできなくなった猫の先行きがどういうものかは、知ってはいた。
保護したその日に様子を見ていて「こりゃあ、見送る責任だけ取る事になるな」と覚悟はしていたから、はなからそれだったから、やりきれない悲しさではないのだけど。「彼女」の首にあった、相当の長年していた様子の首輪あとのハゲが心に刺さる。
弱っていても脱走常習犯の猫ならやたら出口を探すしドアが開けば信じられないようなダッシュかますもんだ。彼女はそれをしなかったし、ひたすら人に構われて触られているのが好きだった。間違いなく、彼女は遺棄されたのだろう。
浄水器を通した水しか飲まないような、外ではまったく食べ物と飲み水を確保する能力がないような彼女が遺棄された理由は、なんだったのだろうか。病気故だとしたら、やっぱりオレはかつての「彼女」の飼い主を非難したい。

サビ猫の「サビ」さんは今は小さな骨壺に入っている。
こういう形で残念だけど、これからもうずっとアンタは人んちにいられるからねとさっき話しかけた。