しかしオレはもはや「アジアの女」でしてね

ノースキンで仕事をしていて、いつどのようにかは分からないがHIV感染したという女性のブログがあるのだが。
んー。
オレも一応その分類に片足突っ込んでる(不安障害持ちなもんで)けど、メンへラーさんかな。家族関係もよろしくなかったようで。
言ってしまえば「ああ、風俗業界珍しくはない話」ってやつになってしまうのだが。


にしても、彼女のブログの記事が真実なら、HIV感染の状態での発覚ではなく「いきなりエイズ」という一番つらい状態か。うーん。
オレの周囲でHIV感染した人々を挙げて行く(ネットで知り合って顔も知らないままの人もいるのだけど)と、うちの息子のとーちゃんは80年代の終わりに感染発覚して、90年代の早いうちに逝ってしまった。彼がせめてあと2年ないしは3年持ちこたえられたら今も長らえていたんじゃないだろうか。
ここしばらくご縁が遠ざかってしまったけど、ゲイ雑誌の編集長をしておられたネット知人はロングサバイバーとなられた。
ネットのチャットでオレに感染カムアウトだけして去って行った人もいた。会った事のない彼の消息は時々思い出して気にしている。(旧しにょはこの通りぼちぼち元気です。サバイブできていたら連絡ください>某氏)


吉原に限定した話をするなら、若い娘さんのうちはスキンでもネットの写真が当たれば稼げるが、実年齢20代後半からはスキン接客をしていたらがくんとフリー客との遭遇率は減ってしまう。
フォトジェニックな女子なら次々に写真更新したりしてなんとかやっていけないこともないだろうが、一般世間の外側から風俗に期待していたほどの収入を得るのは難しくなる。
で、オレはフォトジェニックではなく、もはやまったく若くもなく、ノースキンで仕事をして子供を養って実家まわりに金を送っている、と。


正直思ってるのは、タイトルに書いた通り。
しかし稼がないとどうにもならん。それでも稼がないと本当にどにもならん。
ここしばらく自分としては上出来な程度にネット指名が鳴ったりしているが、それもどういう基準で客から選ばれたかというと、
「そこそこ若そうでノースキンだったから」
これだよ(苦笑) (オレが最終的に決して客達をまともに愛し得ない理由もここですな。ノースキンでオレに接客させている時点で、「原則、きらい」なのだ)
そして、オレはもしかするとこの仕事でHIVを拾うかも知れないが、その時は「ああ」と思うんだろうが、今はこうやってる他どうしようもないからこうしてるんだし、最後には後悔してもどうにもならなかろうなと思う。


「稼ぐ責任と義務が発生する相手が存在する」ってのは、まあなんともはやだが、自分に対しても世間に対してもこれ以上のエクスキューズはない。
そしてつらつら考えたり見回したりするに、不可逆的というか回復不可能な健康ダメージを負うリスクがある仕事というのは、カタギさんの仕事にもある。
彼らが選べなかったようにオレ等もまた選べなかったんだから、ここだけがそういう仕事をしている事を殊更糾弾されてもしょうがないというか、現場の最前線にいる人間を糾弾する前に、現場の環境を作り上げている他の要素にも目を向けてくんな、と思う。
仕事というのはとても恵まれたごく一部のところ以外、すべて報われなくてすべてリスクを抱えているものであるさ、というなんだかなぁな割り切りのもと、オレは日々働いている。
なら、オレだけがどうして負い目を持たないとならないだろうか、などとも。(いや、そう言ったって結局負い目は持ったままなんだけどね)


で。風俗嬢に呼びかけても、「大丈夫だよ」と何が大丈夫なんだかわからない無責任な言葉を発し続ける客、それと管理売春の管理側である店の双方がどうにかならないとこの問題についてはどうにもならないし、女子側だけがどうにかするべき責任を負わされるなら、間違ってる。
正直、コンドームを意志的にきちんとつけるべきという問題はコンドームを付ける男達のものであるし。しかし彼らの欲望は「(リスクもよう知らんと)コンドームを付けたくない」だから、ノースキンというサービスが華々しくネオンで飾られて売られておりましてね。
あと、もし風俗において吉原だろうがどこだろうが「コンドームを装着するのが絶対の原則」になっても、ここがどんな抜け駆けしてでも稼ぎたい、稼がなければならない事情がある女子がいるところである限り、こっそりコンドーム無しで客にサービスする女子は出て来てしまうものだろうしなぁ。それは女子の事情と客のニーズが存在する限り、もうどうしようもないだろうよと思う最近のオレ。
でも、風俗嬢はしょせん商品で、商品は自分の売り方を完全に選ぶ事は出来ない。それは店にどれだけ力を持っているナンバーワン女子でも一緒。なんだから、風俗嬢に「ノースキンはやめて」と訴えたって効果はない。訴えるべきは、金を出している客に対して。だよな。(公衆衛生の立場からどうこうって言われても、こうまで公然とソープランドで何が行われているか知られているのに、公式には「そういうサービスは存在してない」んだから、まずは「そういうサービスが存在している」って前提にしないとこのへん、ますますどにもならんし。規制したところで地下に潜るだけでこの仕事はなくなりはしないんだから、とにもかくにも非犯罪化させとくれ)


しかし、くだんのお嬢さん、23才で発病か。んー…。
ご存知の方も多いと思うが、今「いきなりエイズ」ってのは最近結構増えている。
一方でウインドウピリオド(感染してから検査で感染を発見できるようになるまでの期間)はどんどん短縮されているし、感染しないに越した事はないが、感染しても早期発見(せめてCD4が3桁のうちに、って話だ)して、きちんと医者にかかって薬飲んで節制した暮しをすれば、もはや風俗の仕事はできないが人生は終わらない。
そういう実例を知っているのは幸か不幸か分からないが(オレにとっては悪くない事だけど)、オレはHIVに感染しても人の人生は全く終わらないことだけは事実として知っている。が、知ったその日からまた新たな戦いのステージが始まってしまうのももう知るところなので、できるなら感染は免れたいとも思っている。


しかしオレはノースキンという働き方をしている*1し、どうだかなぁ、といつも思っている。
そして、とりあえず今月もオレが受けたSTD検査(HIV、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナス、尖圭コンジロームヘルペスカンジダ、肝炎)はすべて陰性であった。それは検査したあとたった1人の客を接客したらあやふやになる検査結果で、いや、それどころかウインドウピリオドを考えたら、「ちょっと前の時点ではとりあえずなにもなかった」って証明にしかならないものだ。


しかしさ。オレ等は「稼ぐべく仕事に出てる」んだから金のためにリスクを背負うのをよしとするしかないとしても、不思議でしょうがないんだけど、どうして客である男達は「たかが遊び」で、自分にそんなリスクを背負って他人にそんなリスク背負わせて、平然としてんだろうかね。
たった一言だよ。ろくに訓練もしないで「俺コンドーム付けるといかないんだよ」って、たった一言。それですべてのエクスキューズ終了。
「本当に、こいつらは一体なんなんだ?」って思うよいつもいつも。
思い返すだに恐ろしいのは、スキン接客時代にこっちがスキン接客しかしない・できないと承知の上で選んだ客ですらこれを言うことがあって、しまいにゃ土下座してでも、行為中こっそりコンドーム外してでも「自分だけは許されるはず・できるはず」と思っているのかノースキンでやろうとする事例があまたあったこと。


ちなみに今職場ではピルを服用してないスキン接客の若い女の子が仕事中客にコンドームを外されて、アフターピルの副作用のとんでもない吐き気と目眩と闘いつつ出血を待ちつつ、働いている。コンドームをこっそり外した客はこんなことになっているとはまったく知るまいよ。

*1:これは客に必ずノースキンで接しているというんじゃなく、客がそのように望めばコンドームをつけるし、客がそのように望めばコンドームをつけないということ